●正常咬合と不正咬合
正しい歯並びや咬み合わせを正常咬合といい、問題のある歯並びや咬み合わせを不正咬合といいます。
正常咬合
1.上下の前歯の中心がまっすぐ揃っている。
2.真ん中の前歯から2番目前歯のより奥歯にかけて、3?から4?ずれている。
3.上の歯が下の歯を2〜3mm覆っている。
4.上の歯が下の歯より2〜3mm前に出ている。
5.上下の歯が並んでいるアーチ(歯列)は卵形もしくは丸みのある台形です。

不正咬合
不正咬合には、乱くい歯(叢生)・出っ歯(上顎前突)・受け口(下顎前突)・開咬(カイコウ)などがあります。見た目が悪いだけでなく、咬み合わせが悪く、健康上さまざまな影響を及ぼす可能性があります。
●不正咬合の分類
乱ぐい歯(叢生)
顎が小さいため歯が並びきらずに、でこぼこで重なりあって萌えています。

出っ歯(上顎前突)
上の前歯や上顎が出ています。

受け口(下顎前突・反対咬合)
下の前歯や下顎が上の前歯より出ています。

開咬(カイコウ)(上下の前歯が開いて前歯で咬めない状態)
奥歯を咬み合せても上と下の前歯が開いていて、重ならず、いつも舌が見えている。舌の癖もあります。

交叉咬合(コウサコウゴウ)
横の歯の咬み合わせが反対になっていて、下の横の歯や下顎が出ています。上と下の前歯の真ん中がずれている事が多いです。

過蓋咬合(カガイコウゴウ)
下の前歯が上の前歯に半分以上隠れている状態で、下の前歯が全く見えない事もあります。出っ歯の方に多いです。

口元(口唇)について
エステティクライン(真横から見た口元のバランスの基準線)
上下の口元と鼻の先とあごの先を結んだラインとの位置関係は、ライン上の前後2mmほどの範囲内が理想です。
緊張している口元
- 上口唇と下口唇の突出(下口唇の下の筋肉の緊張が小さい例から大きい例の順に)
上下の前歯が出ている人に多い口元です
- 上口唇の突出
上の前歯や上顎が出ている出っ歯の人に多い口元です。

- 下口唇の突出
下の前歯や下顎が出ている受け口の人に多い口元です。

- オトガイ筋(下口唇の下の筋肉)の緊張
下口唇の下の筋肉が緊張して“うめぼし″のような形ができる状態で、口唇を無理やり閉じている証拠です。普段から、口をあけたままにしていることが多く、口の中が乾いて口臭・虫歯・歯周病の原因になります。

矯正歯科治療とは歯に適切な力を加えて、歯並びやかみ合わせを整える治療で、歯の機能と審美性を良好にして、最適な状態にする治療です。かみ合わせの良い歯並びと美しい笑顔・口元は、健康な体と快適な生活にとても大切で、あなたの自信にもつながるでしょう。
大人と成長終了後の10代の方の場合、全ての歯に矯正装置を装着して、1本1本の歯を移動し、機能的・審美性を考慮して、歯並びやかみ合わせを整え、改善する目的で行います。技術の進歩により、より高度な治療が可能になり、現在は大人でも気兼ねなく治療を受けることができます。
矯正歯科治療を通して、歯磨きの習慣を身に付ける歯ブラシ指導やフッ素塗布などの虫歯予防の歯の衛生管理を始め、一生自分の歯で咬むことの出来るきれいな歯並びのケアで、皆様の健康のお手伝いしていきたいと考え、快適に安心して治療が受けられるよう努力しております。
大人の方へ
矯正歯科治療は子供だけのものでなく、20代・30代・40代はもちろん50代以降になっても治療は可能で、開始時期に年齢制限はありません。
10年前ぐらい前から、自分の意思で矯正歯科治療を希望する大人の方が増えています。かみ合わせの良い歯並びと美しい笑顔・口元を目標にされる大人の方は、歯磨きや装置の手入れなどにも気を配ることができ、お口が良い状態で効率的に治療が進みます。
10代の方へ
成長終了後の10代の方の場合、大人に比べて骨に柔軟性があり、歯周組織の新陳代謝が旺盛なため、歯を抜かない治療の可能性は広がります。
小児の矯正歯科治療との違い
矯正装置の力に対する歯周組織の反応が遅いため、歯の移動は小児より時間がかかります。 成長期の小児の場合、成長発育を促進または抑制し、正しい方向に誘導して、歯と顎を目標とする位置に調整しながら治療を進めていきます。子供の治療期間がI期治療とII期治療に分かれ、治療期間が長くなるのはそのためです。
成長発育終了後の方の場合は、顎の大きさや形が完成しているため、決まった土台の大きさの中で歯を移動して治療を行います。そのため、顎の大きさに対して歯が並びきらない場合や、歯が出ている場合などは、歯を抜いて治療する場合があります。しかし、新しい技術を用いて、歯を抜かないで治療できる場合もあります。
注意点
●虫歯
初診の相談に来院する前に、虫歯を完全に治療しなければと考える方がいらっしゃいます。もちろん虫歯がある場合は早く治療する必要がありますが、矯正歯科治療では場合によっては歯を抜くことがあり、虫歯の歯がその対象になるかもしれません。精密検査を受けてから虫歯の治療をする必要がある歯を説明します。
●親知らず
親知らず(第三大臼歯)は一般的に18〜20才ぐらいで完成しますが、萌出場所の不足で、全く萌えてこない、正常に萌えてこない場合が多く、第二大臼歯に害を与えたり、歯周組織に炎症を与えたりします。そのため、抜歯をしたほうが良いのですが、治療方針によっては親知らずを利用することもあるので、精密検査を受けてから説明します。
●人工の歯
矯正歯科治療を希望する人が、人工の歯(セラミック・金属)を被せてあっても、神経を取っている場合でも、矯正歯科治療では、力を歯根膜と呼ばれる歯根の繊維の膜に作用させることにより骨の改造が起こり、歯が移動します。よって、歯根や歯周組織が健康であれば矯正歯科治療を行うことができます。また、失った歯があっても最適な治療方針で治療を進めていきます。
●治療の限界
大人と成長終了後の10代の方は、顎に力を加えも変化しないため、歯の移動のみで歯並びやかみ合わせを整えて治療をします。そのため、治療には限界があり、骨格に大きい問題がある場合や顎の骨のずれを大きく改善しなければならない場合は、外科手術を併用した矯正治療が必要になることがあります。
大人の矯正歯科治療の流れ
初診の相談と精密検査後に歯並びやかみ合わせと骨格などのタイプ、治療のスケジュールや治療費を説明します。装置の装着後は3〜5週間に1回のペースでの来院が必要になります。個人差がありますが、治療期間の目安は2年から3年になります。
- 初診相談
矯正歯科治療や装置に対する希望や心配事をお聞きして、歯並びやかみ合わせと骨格などのタイプを説明し、予想される治療費や治療期間も提示します。 - 検査
不正のタイプを的確に診断し、最良の治療計画を立てるために、レントゲン撮影、歯の模型と咬み合わせと顎の関節の検査、顔と口の写真撮影等を行います。また、歯並びやかみ合わせに影響を与える悪い癖や顔と口の筋肉の問題についても診査します。 - 治療計画の説明
精密検査の資料から、歯並びと咬み合わせ、骨格のタイプ、歯並びに影響を与える悪い癖や顔と口の筋肉の問題を説明し、口唇の出ている方にはコンピュータで治療後の横顔の予測写真を提示します。また、最適な治療方法、治療の期間、治療費を詳しく説明し、納得して治療を受けていただけるよう、充分に話し合った後で治療を開始いたします。 - 矯正歯科治療の開始(治療の準備と矯正装置の装着)
治療の準備にセパレーションというゴムの装着に来ていただきます。その一週間後に初期の段階で必要な矯正装置を60〜90分かけて歯に装着します。(最終的には全部の歯に矯正装を装着します。)
バンドやブラケットやワイヤーなどの装置は、少し違和感や痛みを感じる場合がありますが、徐々に慣れてくるのでご安心ください。 - 矯正歯科治療の定期的な通院
定期的な通院は3〜5週間に1度必要となり、歯を動かすために矯正装置の調整を20分から30分で行います。治療の段階が変わる場合は、60〜90分の予約を取っていただく場合もあります。必要に応じて、歯並びに影響のある舌の癖等の改善の指導も行います。 - 保定期間 (矯正装置の除去後の定期的な通院)
歯並びがきれいに並んでも、装置を外すと歯並びが後戻りする場合があるので、矯正装置の除去後、数ヶ月から半年に1度来院して頂き、歯並びと保定装置のチェックを行います。完全に安定が確認される2・3年後に治療を終了します。